ダンちゃん
昨日「星守る犬」という日本映画を見ていた。妻子に逃げられ仕事を失った中年男性(西田敏行)が飼い犬ハッピー(秋田犬)を連れて最後の旅に出る話だ。
北海道のキャンプ場奥の山林から白骨死体と犬の死体が発見された事件から物語は始まる。孤独な人生を送ってきた市役所福祉課の青年職員(玉山鉄二)が白骨死体と犬の身元を捜し始めることから物語は展開していく。
映画を観ながら2017年に亡くなったダン(パグ雄犬)を思い出していた。私は2015年に母校に戻ることが決まった途端、大腸がんステージ4が発見された。診断が下された12月25日、私は悲しみと落胆でマンションに帰った。タカタカと遅い足でダンは私のところにやってきた。どんなときでもペットは傍に居てくれる。私はダンを抱き、そして温もりや匂いを感じた。「あと何年生きるのか」と思っていたが、先輩、同級生、後輩医師や看護師らの手厚いケアで、2016年夏頃に体調は回復した。しかし私が元気になるのに反して11歳のダンは元気がなくなっていく。獣医に連れて行くとダンは転移性の肺がんが広範囲に広がっていた。
2017年1月2日にダンは亡くなった。その1週間後、1年目のがん検査で私のがんは全て消えていた。この話しをペットロス協会会長の吉田千史先生に話したことがあるが、身代わり話しは多いという。
クリニックの医療事務の壁にはダンの小さな写真を飾っている。ときどき、患者さんが「ダンちゃんですね」と言ってくれる。手帳には今でもダンの写真を入れている。
ペットロスの患者さんも来ているが、愛犬や愛猫や愛兎や愛鳥の死の辛さは自分のことのようによく分かる。
ダンが亡くなった後、自分を慰めるために一日に何度も聞いていた宇多田ヒカルのStay Goldをまた聞いている。
「大好きだから、ずっと、何にも心配いらないわ」
ダンが今も言ってくれている気がする。
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