岐阜屋にて

 昨日は久しぶりに新宿思い出横丁にある岐阜屋にいってきた。もう店長の伸ちゃんはいない。伸ちゃんが生きていた頃に、「実名で出していいよ」と言われたので、自分の短編に実名「岐阜屋」を使っていたが、亡くなってしまったので、もう一度オーナーに確認するためだ。弟子の孫さんがいた。ヨコハマ文芸をもっていったら喜んでくれた。

 墓は上野の方にあるので、墓参りに行こうと思っている。

 ときどき店で会う老人が昨日も来ていた。「店長いなくなったんですよね」と話しかけると「ああ、客層が変わったよ」とカウンターに座る人達を見て淋しそうにつぶやいた。それだけの会話だが、心が通じた気がした。なんだか淋しくなってしまい、酎ハイを4杯くらい飲んでしまった。今でも、消去できずに伸ちゃんの電話番号とメッセージはとってある。

 孫さんが「おれも店長のLINEをとってあるよ」と見せてくれた。

 そこには「先生に相談したらどうだ」(孫)「先生は高いからいいよ」(伸ちゃん)と書いてあった。

 高いどころか、ただでもよかったのに。

 カウンター越しに自分ばかり話していたなあ凹。

 親不幸の私が親を亡くした時「親より長くいきてるだけで親孝行だ」と言ってくれた。私ががんから生還した時に一緒に撮った写真は今でも大切にしている。

 もっと話しを聞いてあげればよかったと思う。盆休みが来るが、やはり淋しい。

  伸ちゃに髭だけ似ているYanniを聞く。


藤村邦&渡辺俊之の日々

精神科医をやりながら、小説など書いている藤村邦(本名渡辺俊之)のブログです。

1コメント

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  • 冨澤理紗

    2022.09.03 20:37

    どうもお世話になっております。 冨澤です。 待合室でヨコハマ文芸を読んでいたら岐阜屋の信ちゃんが死んだ話があったのでえーっと思いながら読みました。 実際に信ちゃんは亡くなっていたんですね。ひとがいなくなってしまったぽかんとした寂しさ…。よいお話でした。高村センセーのシリーズ好きです! 私はnoteでヘタクソな小説を投稿してますんでよかったら見てみてね。 https://nete.com/ne_kone_ko/n/n481257467bcc で紗世という名前で書いてまーす。