アーミッシュ

始めてアメリカに行った時、私はアーミッシュビレッジに行った。

アーミッシュは移民当時の生活様式を守るため電気を使用せず、現代の一般的な通信機器(電話など)も家庭内にはない。原則として現代の技術による機器を生活に導入することを拒み、近代以前と同様の生活様式を基本に農耕や牧畜を行い、自給自足の生活を営んでいる人達である。(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5)

   先日も地球の氷河が今世紀終わりに半分になり海面が上昇して大惨事になることや、米国での異常気象で食物不足の危機など報道されている。その度に、アーミッシュの質素な生活を思い出す。コロナ前にはペンシルバニア州のアーミッシュビレッジに行った。その時にかった、彼らの店で売っていた作品は診察室にかけてある。

 誰かが言っていた。

 文明は200年の間に進歩した。電気、自動車、飛行機、そしてパソコン、ネット環境・・しかし、それを扱う、私達の「心」である自我機能は進歩どころか、退行しているのではないかと。人はより早く、明るく、暖かく、涼しく、快適に、便利にを求める。快楽原則追級の結果、文明も経済は発展した。戦争だって、昔は地域で竹槍での闘争だが、今ではボタン一つで世界は滅びる。

 寛容さがなくなり、自己愛的になった気がする。主義や宗教という名のもとに殺傷が繰り返される。誰が何を信じようかいいじゃないか。皆、違うのだから。

 最近感じるのは、ネット社会に興じる中高生の危機である。リアルな世界を持ち、ネットにはまるのなら良い。問題はリアルな世界を持たずしてヴァーチャルだけの世界に自分を置くことだ。人間関係が苦手なのはわかる。ただ、これから大切な人間関係を学ぶリアルな世界から撤退してしまうことは、とても危ない。ヴァーチャルでは臭いも味も、肌の暖かさも息づかいも体験できない。手をつないだり握手もできない。

 アーミッシュの話に戻るが、他の主義や宗教を許さなかったり集団虐殺したりする国にくらべれば、こうした人達、多様性を寛容する米国はやはりリーダーであるべきだと思う。

藤村邦&渡辺俊之の日々

精神科医をやりながら、小説など書いている藤村邦(本名渡辺俊之)のブログです。

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