クリスマスプレゼント

 7年前のこと。母校に戻ることが決まり、医学部の仲間達が居酒屋で一席もうけてくれた。  その席で「50代だから内視鏡でもやっておけよ」と言われ、飲んだ後の下痢くらいしか症状はなかったが、父親が「オレは50代で大腸がんをやった」という言葉を思い出し、後輩のクリニックで内視鏡を受けることにした。

それが2015年12月25日のクリスマスの日だ。

「ポリープがありますね」と画面を観ていたが、さらに進むと医師も私も言葉が無くなった。大腸を塞ぐ「がん」であった。すぐに大学病院に連絡を入れてもらい、消化器外科教授に診察を受け、年末年始は検査一色になった。すでに手術前提に抗がん剤も処方されたと思う。悪性リンパ腫から生還した友人の放射線診断医のYが肝臓に5㎜程度の転移巣を見つけてくれた。5センチではなくて5ミリである。1月に手術が行われ、そして肝動注、点滴抗がん剤、服薬が始まる。あと数年だろう思ったりもしたが。愛犬のダンの身代わりもあり、私のがんは1年目にして消え完治した。。

 最初は「クリスマス日に大腸がんかよ」と思ったが、今では「大きなクリスマスプレゼント」だったと思っている。

 偶然が重なった。大学に戻ることを決めなかったら宴会もなかった。きっと肝転医は大きくなっていただろう。Yの眼力で発見してくれなければ転移再発は後から見つかったかもしれない。当時の教授は肝動注という転移性肝がんの専門治療の権威だった。

「誰かのために生きていれば、ちっとは良いことある」と言った祖父の言葉を思い出す。アドラーという心理学者は幸せ3要素に自己受容、他者信頼、他者貢献をあげている。

あれから7年。先日のがん検診では、転移はどこにもなく、腫瘍マーカーは正常となったていた。酒を控えたせいか中性脂肪も脂肪肝も改善していた。

 まだまだ元気に診療は続けられる。

 やはり、クリスマスはこれでしょ。今日はイブ

藤村邦&渡辺俊之の日々

精神科医をやりながら、小説など書いている藤村邦(本名渡辺俊之)のブログです。

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