手紙

ビューティフルレターズという映画を見た。

両親は離婚し、成績不振、バンドからも阻害され、すっかり自信を失っていた女子校生に手紙が届く。知らない人からの手紙だったが、そのメッセージに彼女は励まされ、老人ホームにいる高齢者と出会うことになる。そして生きることの意味を見出していく。

 私にも同じような経験がある。小学1年から中学3年まで差し出し人の名前のないクリスマスカードが毎年、この時期に届くようになる。「がんばってますか」「元気ですか」というメッセージが描いてあった。

 中学生くらいになった時、きっと差し出し人はK先生と思うようになった。

 両親が離婚していた私は、M幼稚園で何も話せないような緘黙のような子だった。幼稚園にも行きたくなかった。分離不安が強かったのだと思う。K先生がいつも傍らにいた。家に迎えにきてくれたこともある。

 この思い出は、新聞のコラムや本にも書いてるのだが、映画に刺激されたのか、ブログに綴りたくなくなった。

 そして40年後

 K先生と再会することになる。健大教員時代に教員免許講習に来ていたM幼稚園の教諭に話したら、M幼稚園には伝説の先生として名前が残っているという。彼女はK先生の所在を探してくれた。

 私は都内の老人ホームにいるK先生を訪ねた。小さくて高齢な先生は私をハグして「トシちゃん」と言って涙した。それから、この時期に私は老人ホームを訪ねるようにした。

 数年前にK先生は亡くなった。でも、私の心には生きていて、今でも応援してくれている。


藤村邦&渡辺俊之の日々

精神科医をやりながら、小説など書いている藤村邦(本名渡辺俊之)のブログです。

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